「ビットコイン建てで貯金を行う」という概念を聞いたことがあるでしょうか。正直私はあまり聞いたことがないです。多くの人がこれまで信じて疑わなかった「銀行口座にお金を貯める」という行為。確かに従来は、現金(フィアット通貨)を貯蓄することが、いちばん堅実でリスクが少ないとされてきました。しかし近年の世界経済や各国の金融政策、そしてインフレ傾向を考えると、本当にフィアット通貨での貯金は将来にわたって価値を保ち続けるのでしょうか。
答えは、限りなく「ノー」に近いと私は考えています。フィアット通貨、つまり日本円やユーロ、米ドルなどを貯め込むことが、もはやリスクを減らす行為ではなくなりつつあるように感じます。現代社会における貯蓄戦略として「ビットコインで価値を保存する」ことが、いわば新時代のスタンダードになっていく可能性があるというわけです。そして、その道を究め、能動的に「ビットコイン建てで資産を保全し増やしていく」ことに取り組む人々を、ここでは「ビットコインプロ貯金家」と呼ぶことにしましょう。
なぜフィアット通貨建てでの貯金を否定するのか
フィアット通貨──いわゆる法定通貨は、中央銀行や政府のさじ加減ひとつでいくらでも発行できる「イージーマネー」であることを、まず強く認識する必要があります。通貨を増刷するという行為は紙幣の量を際限なく増やすこととほぼ同義であり、これはインフレ圧力を高め、通貨の価値を薄める最も直接的な要因です。ここでは、フィアット通貨での貯金を否定する理由として、この「イージーマネーが招くインフレと価値の目減り」について掘り下げていきます。
- イージーマネーによるインフレの常態化
各国の中央銀行は、景気刺激策として量的緩和(QE)を行ったり、金利を操作したりすることで、経済への通貨供給量を積極的に増やすことがあります。こうした政策は短期的には景気を支えるかもしれませんが、長い目で見れば「通貨の供給過多 → 価値の希釈化」という結果をもたらします。
フィアット通貨は「無限に増刷が可能」であるがゆえに、発行当初は1万円札、1ドル札に一定の購買力があったとしても、時間が経つほどにその力は薄まりやすい。これこそがイージーマネーの最大の欠点であり、私たちの預貯金をじわじわと侵食する“見えにくいコスト”になっているのです。 - インフレによる購買力の激減
インフレが進行すると、同じ金額で買えるモノやサービスの量は確実に減っていきます。仮に銀行に預けたお金が数字上同じ額であっても、実質的に「何がどれだけ買えるか」という購買力は年々下がり続ける可能性が高い。これは、物価上昇が大きい国に限らず、先進国でも利上げなどのタイミングを誤れば物価の上昇局面が到来し、通貨価値が下がるリスクは常に潜んでいるのです。
つまり、フィアット通貨の「表面的な額」を増やすことをいくら頑張っても、通貨そのものに内在するインフレリスクを回避できない限り、「モノの値段が上がる=お金の価値が下がる」というトレンドは変わりません。銀行の定期預金におけるわずかな利息などでは、その目減りを防ぐのはもはや不可能に近いと言えます。 - 低金利と手数料による実質損失
先進国の多くでは低金利政策が長く続いており、普通預金や定期預金の金利はごくわずかです。さらに一部の国や地域ではマイナス金利が導入されたり、将来的に新たな形での金融課税や手数料が拡大される可能性も否定できません。わずかな金利しかつかない上に、インフレや手数料が上乗せされれば、実質的に資産が目減りしていく構図が見えてきます。
こうした状況下で「銀行口座にお金を寝かせておく」という行為は、もはや堅実な資産保全策とは呼べず、「通貨価値の希釈化を受け入れているに等しい」状態と言えます。 - 国家・金融機関の信用が頼りのシステム
フィアット通貨はその国や中央銀行の信用力を前提としていますが、先にも述べたように、その信用力の裏には「際限なく刷ることができる」というカラクリが隠れています。金融システムや経済危機に陥ったとき、政府や中央銀行はさらなる緩和策として通貨を増刷し、足りない分を補うという手段に頼ることが非常に多いのです。
つまり、私たちの「預金通帳の数字」は、一見すると安心のようで、その価値の基盤は“通貨大量供給=インフレリスク”と紙一重であるといえます。政府や中央銀行、金融機関が深刻な問題に直面した場合、その歪みは国債や通貨発行量の拡大を通じてすぐに私たちの手持ち資金へ跳ね返ってきます。 - イージーマネーとの決別を図る必要性
「お金は銀行に預けておけばとりあえず安心」という、これまでの常識が揺らぎつつあるのが現代社会です。なぜなら、インフレによって通貨価値が下がりやすい構図は変わらないにもかかわらず、金利はほとんどゼロに近い状態が常態化しているからです。
こうしたイージーマネーによるインフレリスクと低金利の現状を前に、「フィアット通貨をひたすら貯める」ことは長期的に見たときに最善策とは言えません。従来のやり方でお金を増やしているつもりが、実質的には目減りしている可能性のほうが高いのです。ここに気づいた人々が、ビットコインという「発行上限が決まった希少性のある通貨」に注目しています。
暗号資産(仮想通貨)の中でもビットコインを推奨する理由
「暗号資産」という言葉を耳にすると、イーサリアムやリップルなど、ビットコイン以外のアルトコインを思い浮かべる人も多いでしょう。実際に何千何万という種類のトークンが存在します。しかし、本記事では暗号資産の中でもビットコインを最も推奨します。なぜなら、ビットコインだけが「供給量が完全に制限され、徹底的に分散化された唯一のデジタル資産」といえるからです。
- 発行上限が存在する
ビットコインは、2100万枚が最大発行量としてプログラム上で固定されています。新しく発行されるビットコインの量は4年に一度、半減期を迎えるごとに半分になります。これによって価格上昇圧力が働くメカニズムが組み込まれているのです。アルトコインの多くは、将来的に供給量が増えたり、インフレ的な通貨モデルを採用しているケースが少なくありません。 - ネットワーク効果と実績
2009年に誕生して以来、ビットコインは最古参の暗号資産として取引量や時価総額でずっとトップを走り続けてきました。最先端の技術をもつ新しいアルトコインが続々と生まれるなかでも、ビットコインの信用力は揺るぎない存在です。世界中の投資家や法人がビットコインに資産を振り向ける動きが強まっており、これらがさらなるネットワーク効果を生むと考えられます。 - プロジェクト運営主体への依存度の低さ
ビットコインには中央管理者が存在しません。アルトコインの多くは開発会社や組織によって運営・管理が行われ、その意思決定が通貨の仕様や価格に影響するリスクがあります。ビットコインはオープンソースであり、誰もがプログラムを検証できます。プロジェクトの要人が逮捕されたり倒産したりしても、ビットコインそのものが消滅する可能性は極めて低いのです。
「ビットコインプロ貯金家」とは何をする人か
では、「ビットコインプロ貯金家」とはどのような人物像を指すのでしょうか。ここでいう「プロ貯金家」とは、単純にビットコインを買って放置するだけではなく、以下のような習慣を身につけ、ビットコインの特性を最大限活かそうとする人々を指すと考えます。
- ドルコスト平均法を活用する
ビットコインの価格はボラティリティが高く、短期的には大きく値動きします。しかし、長期的に見れば「有限の資産」であるため、希少性が高まっていくと考えられています。そこでドルコスト平均法(一定額を定期的に購入する手法)を用いることで、価格変動のリスクを平準化しながらビットコインの枚数を着実に積み増していきます。 - 秘密鍵の厳重管理を徹底する
ビットコインは自己管理が原則です。取引所に置きっぱなしにしておくことはセキュリティ上リスクが高く、取引所が破綻したりハッキング被害を受ける可能性があります。取引所やDifiでの運用を否定はしませんが、せっかくの虎の子のBTCですから、ハードウェアウォレットなどを活用し、秘密鍵を自分でしっかり管理し、BTCの大部分を自己管理することがプロ貯金家としての条件と言えるのではないでしょうか。 - 社会・経済情勢を常にウォッチし、必要に応じて戦略を修正する
世界各地の金融政策やビットコインの法規制動向などは、常に変化するものです。特に暗号資産は新しいテクノロジーであり、国や地域によって規制方針がまったく異なります。そのため、常に情報収集を怠らず、ビットコインに対する社会的評価や採用状況を見極めていく必要があります。
ビットコイン貯金のメリットとデメリット
ビットコインプロ貯金家を名乗るには、それなりのメリット・デメリットを理解し、リスクを引き受ける覚悟が必要です。
メリット
- 長期的な価値保全が期待できる
供給量が限られていることと、世界的な需要の増大が見込まれるため、長期的に価格の上昇が期待できます。すでに初期のビットコインは1BTCあたり数円〜数百円ほどだったものが、現在では数百万円台に達したことが実証しています。 - 分散型資産としての独立性
国家や金融機関に依存せず、自分自身で管理できる点は大きな魅力です。政治・経済情勢や銀行の倒産リスクからある程度独立した資産として機能します。 - 越境性・送金の自由度
ビットコインはインターネットさえあれば、世界中どこにでも送金が可能です。高額な手数料がかかる国際送金と比較しても、コストや時間が大幅に抑えられるケースがあります。
デメリット
- 価格変動リスク(ボラティリティ)
ビットコインは価格変動が激しいため、投資額が数週間・数カ月で大きく変動する可能性があります。急落する局面が訪れても耐えられる心構えや、長期目線での運用が必須です。むしろ安くなったのでいまのうちに労働でフィアットを獲得してBTCを買おうと思えるくらいでないと、ビットコインプロ貯金家としては厳しいのではないでしょうか。 - 規制リスク
各国政府が暗号資産をどのように規制するかによって、価格や流動性が大きく影響を受ける場合があります。特に一部の国家が極端な禁止・制限策を打ち出すと、ビットコインにとっては一時的には大きな逆風となりかねません。 - テクノロジーリスク(秘密鍵の管理など)
自分のウォレットに保存しているビットコインは、自分自身が秘密鍵を管理する限り、誰にもコントロールされません。ただし、秘密鍵を紛失したり、ハッキングに遭えば取り戻すことは非常に困難です。このリスクは銀行にお金を預けるのとは全く異なるため、覚悟とセキュリティ対策が必要になります。
ビットコインプロ貯金を始める手順
ビットコインプロ貯金家を目指すのであれば、以下のステップで始めることをおすすめします。
- 情報収集と学習
まずはビットコインの仕組み、ウォレットの使い方、秘密鍵の管理方法など、基礎的な知識を学ぶ必要があります。「ビットコイン 白書(ホワイトペーパー)」を読んだり、信頼できる専門家やコミュニティの情報を活用することが大切です。 - 国内外の取引所を比較検討
ビットコインを購入するためには、国内または海外の暗号資産取引所を利用します。取引所選びのポイントは、手数料の安さ、セキュリティレベルの高さなどが重要かなと。いくつかの取引所を比較し、口座開設しておくとベターでしょう。 - ハードウェアウォレット・コールドウォレットを用意
取引所でビットコインを購入したら、自分の管理下に移すのが望ましいです。ハードウェアウォレット(LedgerやTrezorなど)を準備し、秘密鍵を安全に管理します。ウォレットのパスフレーズやリカバリーフレーズは厳重に保管し、一切流出しないようにしてください。保管方法は慎重に考えなければいけないことです。 - ドルコスト平均法でコツコツ積み立て
一括で大きな金額を投じるのはボラティリティの高いビットコインではリスクが大きいものです。精神的にも慣れてない人は辛いものがあるかもしれません。毎月決まった額を購入し、長期的な保有を前提とすることで、急騰・急落に一喜一憂することを避けられます。 - 定期的にポートフォリオを見直す
ビットコインが値上がりすればポートフォリオの構成比率が一気に高くなることがあります。リバランスを行うことは完全には否定しません。リスクを調整しつつ、ビットコインを中核とした資産形成を維持していきましょう。ビットコインを日本円に変換するとき、それがはたして本当に利益確定という行為と言えるのかは、一考してみる価値があると私は思います。
まとめ:ビットコインプロ貯金家は「合理的な選択」
日本円やドルといったフィアット通貨に資産を集中させることは、インフレ時代においてリスクを取っているとも言えます。銀行預金を積み上げることは「価値が増えるどころか、むしろ目減りする可能性がある」という事実に目を向けるべきです。ビットコインは発行上限が固定され、国家のコントロール下にない資産として、長期的に価値保全手段となりうる存在です。
「ビットコインプロ貯金家」は、ビットコインが持つ希少性と分散性を最大限に活かしながら、自分自身の資産を守り増やすための新しい選択肢を提示します。しかしながら、当然のことながらその道にはリスクがつきまとい、自己責任の原則が重要になります。ビットコインに限らず、あらゆる投資や金融商品にはリスクが伴いますし、国際情勢やテクノロジーの変化が今後どのように影響するかは誰にも断言できません。
それでもなお、従来の常識が破壊されつつある時代において、新しい発想を取り入れ、通貨の概念そのものを問い直すことは有意義と言えます。まさに「自分のお金は自分で守り、自分で増やす」時代にふさわしい選択肢として、ビットコインプロ貯金家という生き方・スタイルを一度検討してみてはいかがでしょうか。
本記事は投資や資産運用の勧誘・推奨を目的とするものではありません。また、将来の価格上昇や利益を保証するものではありません。ビットコインや暗号資産への投資には多大なリスクが存在しますので、ご自身の資金状況や投資目的を十分に考慮し、必ず自己責任のもとで慎重に行ってください。